Google大解剖。グーグルの未来を占う秘密のプロジェクト。MoonShot(超イノベーション)を生み出す秘訣に迫る。ヘルスケア、アンチエイジング、スマートシティ、ホームセキュリティ、自動運転、電力などなど
Googleを大解剖!!!
今日はGoogleについてです。昨年、Googleは持ち株会社である、Alphabet(アルファベット )を設立し、Googleも含めて関連会社を子会社として傘下に収めました。「インターネットやGoogleのコアビジネスに直接的な関連性が少ないプロジェクトなどをしがらみなく進めやすくする為」というのが理由と言われています。Taxメリットなどもひょっとしたらあるかもしれませんが。Googleはこの10年余りでもとてつもなく巨大になっています。少し自分の為に整理をつける為に、調べてみました。出来る限り分野別に。AtoZで並んではいません。
IC : money.cnn.com
まずはGoogle Xのプロジェクトについてです。Google Xは『MoonShot』=難易度は高いがインパクトの大きい問題 の解決を行う為の研究所です。
最近ではAIが碁で人間のチャンピオンを倒したAlpha GOが話題になりました。過去のプロジェクトではGoogleグラスや前回の記事で紹介したGoogle Life Science(現 Verily)がありました。
今回は、各プロジェクトの紹介やそのトップを務めるAstro Teller(アストロテラー)に焦点を当てて彼らのイノベーションプロセスに迫ってみたいと思います。
Google X(現在は"X")のミッション特性について
" adding that X's goal is to "have an impact on the world and then worry later about making money on it."
" the mandate for X this way: Identify some really big problems that Google might be able to solve by applying technology in a radically new way."
googleXのトップであるテラーは、Google Xのミッションについて、
「まずは世界にインパクトを与えること、お金の事については後で心配すること」
「テクノロジーを大胆な新しい形で用いGoogleが解決することができる問題を特定すること」
と述べています。 世界の多くの企業や機関が問題解決に取り組む際にやはり大きな課題になるのは『予算』、Google Xはその予算を明らかにしませんが、広告事業で得られる巨額の利益をこの『MoonShotの追求』に投下しています。長期間で利益の事を考えることができ、Googleのブランドで世界の超優秀なタレントを集める事ができる。アストロテラーはGoogle Xの研究所(Factory)について『超優秀なデザイナーとサイエンティストが隣で働いているようなちょっと変わった場所だ』と語っています。
How google X work(グーグルXのイノベーションの仕組み)
トップのアストロテラーを取り上げた過去の記事やインタビュー動画などから、Google Xのミッションからイノベーションを生み出す考え方や仕組みに迫ってみました。
IC : fortune.com
IC : popsci.com
MoonShotを生み出す為の3つの条件
アストロテラーは、ムーンショットを生み出す為には3つの条件を満たすことが必要だとしています。この3つの条件を満たしたプロジェクトでないと、解決はできてもインパクトが小さくムーンショットにはならないそうです。このインパクトの大きさ×解決可能性という考え方は非常に重要で、日本の問題解決に関する書籍でもよく述べられます。
①The first one is that it’s a huge problem. That sounds pretty obvious, but it’s incredibly not obvious in fact.「問題それ自体が大きく」
②Then the second thing is that there has to be some kind of radical proposed solution. It should be a science fiction-sounding product or service. 「大胆で抜本的な解決策が提示できること」
③Then the third one is some reason to believe that this isn’t just pie in the sky. We would call this breakthrough science or tech.「そしてその解決が夢物語ではないと信じさせるような化学や技術の革新があること」
※"pie in the sky"= 希望的観測, 絵に描いた餅(良さそうだが実現不可能なこと).
如何に早くプロジェクトを潰せるかが重要
Google Xでは、いくつものプロジェクトを同時に進めており、そのタレントの豊富さから数々のアイデアが生まれます。アストロテラーは「プロジェクトを如何に早く、感情的な重みを少なく殺せるか」が重要だと考えています。またプロジェクトの多くについて内容を公開しない理由として、「プロジェクトを公開して進めれば進めるほど、プロジェクトを潰す事が難しくなるから」としています。Google Xのプロジェクトは公開されているのは、本当にごく一部で多くのプロジェクトがクローズされているそうです。
I want to be able to kill projects as fast as possible with as little emotional baggage as possible. One of the rate-limiting issues of innovation is that people have a hard time killing their projects.
So the more we are publicly committed to a project, the harder it becomes for us to kill it.
下の写真は、クローズされたプロジェクトの一例。作物の栽培プロセスを自動化できるシステムだそうで、一部の作物で成功したそうですが、米などの主食で実現できないことが判明し、インパクトが小さいとしてクローズされました。
失敗を恐れさせない為には失敗を歓迎し祝うこと
アストロテラーのTEDトークです。人間は通常失敗を恐れるものです。失敗をすることは一般的に評価を下げたり、給与が下がったり、酷いとクビになったり。だから多くで、プロジェクトを早期に潰すことが難しいと語られています。Google Xでは『プロジェクトを潰す事により賞賛される為、チームはそのプロジェクトを潰すに十分な証拠が揃った瞬間にプロジェクトを潰す、そして拍手されハグしハイタッチをし、昇進もするしボーナスも出る』とされています。このようなカルチャーにより、『想定していたインパクトが出せないプロジェクト』や『解決可能性が低いと判断されたプロジェクト』を出来る限り早期に潰し、限られた資源(人・お金)を最適に配置することができ、結果的に多くのイノベーションを起こすことができるのですね。
We work hard at X to make it safe to fail. Teams kill their ideas as soon as the evidence is on the table because they're rewarded for it. They get applause from their peers. Hugs and high fives from their manager, me in particular. They get promoted for it. We have bonused every single person on teams that ended their projects, from teams as small as two to teams of more than 30.
今回はこれでおしまいにします。まだ、AI、ロボットなどあるはずですが、この分野は最近ホットなので他にもたくさんの記事があるはずです。今回調べていたうちで、Google Xの傘下にあるとされる企業をピックアップしています。Deep MIndやBoston Dynamicsは有名ですね。
参考:Google X傘下の企業
様々な取り組み①ヘルスケア、医療分野
Calico:California Life Company(カリコ)
Verily
IC : the nextweb
様々な取り組み②投資・ベンチャーキャピタル
Capital:Google Capital(キャピタル)
GV:Google Ventures(ジーヴィー)
以下は、 Capitalのポートフォリオから5社ほど抜き出してみました。Fintech、セキュリティ、求人などなどです。CreditCarmaなどはもうインフラレベルになっていますね。サーベイモンキーは日本でも割と有名ですね。すべてのポートフォリオはコチラで
SurveyMonkey(ネットリサーチ・アンケート調査ASP)
CrowdStrike(SaaS型セキュリティソフトウェア、マカフィーの元CTOが独立)
Glassdoor(評判や給与等の求職関連情報の提供とマッチングプラットフォーム)
様々な取り組み③インフラ、スマートシティ、ライフスタイル
Google Fiber(グーグルファイバー)
Nest(ネスト)
ネストは自宅用のサーベイランスカメラや、スマートサーモスタットなどのスマートホームのソリューションを提供しています。「自宅の様子をスマホ経由で確認できる」、「ライトが着いたら帰宅の合図、スマホにお知らせ」、「温度が30℃超えたらエアコンをオン」、「ある一定の電気消費量を超えないように調節したい」などを実現します。ネストはGoogle Xなど高度なテクノロジーを駆使し大きな変革をもたらすという側面よりFiberと同じようにGoogleの拡大戦略の中で必要なパーツとして加えられた企業というイメージがあります。
Meet the 3rd generation Nest Learning Thermostat
Side Walk Labs(サイドウォークラボ)
様々な取り組み④Self Driving Car(自動運転車)
"Cars are dangerous because humans drive them"「自動車は危険だ、なぜなら人間が運転するからだ」自動車の性能がどれだけ進化しても、人間という修正不可能なバグがある限り、交通事故は現在より大きく減少しないと彼らは考えています。アメリカでは交通事故の原因の94%がヒューマンエラーによるもので、毎年120万件の人身事故が起きているそうです。人間より信頼のおける自動運転でアプローチを行う。また自動運転車は、老化や身体的な支障により運転ができない人々に機会を与えることができます。
Imagine if everyone could get around easily and safely, regardless of their ability to drive.Aging or visually impaired loved ones wouldn't have to give up their independence. Time spent commuting could be time spent doing what you want to do. Deaths from traffic accidents—over 1.2 million worldwide every year—could be reduced dramatically, especially since 94% of accidents in the U.S. involve human error.当初グーグルは『完全な自動運転』ではなく『ほとんど全てを自動車が行う』という方向性でプロジェクトを進めていましたが、Google Xの責任者であるAstro Teller(アストロテラー)は「緊急時に人間が運転することを想定しておくことは非常に悪い考えで、安全ではなかった」とし、プロジェクトの方針を『完全な自動運転』にシフトしました。最終的なゴールでは、人間が行うことは、「目的地を車に伝えてボタンを押すだけ」で、他のことは全て車が自律的に行います。
Obviously Google X never killed its driverless car project, but they did take it in a different direction after discovering their original idea didn't hold up.The original plan for driverless cars was to have the car "do almost all" the driving and allow for a person to take over in emergency situations."[It] was a really bad plan. It just wasn’t safe," Teller wrote.That's actually what led Google to invest in making fully autonomous cars.参考: Alphabet's Google X killed over 100 moonshot projects in 2015 - Tech Insider 以下は、プロトタイプの最新モデルの写真です。人間が運転する事を想定していない作りになっています。ハンドルもブレーキもありません。その走行の様子や、自律走行をどのように実現しているのかを解説している動画です。 セルフドライビングカーは大きく社会を変革することが予想されルールの整備などが今後課題になってきます。個人的に気になっているのは、事故が起きた時の責任の所在と保険の適用関係。ルールによっては自動車保険のビジネスが崩壊しそう。※自動運転車については、こちらの関連記事も是非ご覧下さい。
様々な取り組み④遠隔地への輸送・ネットアクセスの提供
Project Titan (ドローン、ネットアクセスの提供)
Project Titan(タイタン)は、大気圏内を飛行できるドローンを使って、インターネットが利用できない地域でもアクセスできる手段を提供することを目標にしたプロジェクトです。2014年にTitan Aerospace社を買収しています。機体のほとんどが太陽光発電パネルになっています。後述するProject Loonもインターネット未到達の地をConnectedにすることを目的としていますが、ドローンとバルーンの2つの異なったアプローチからこの問題に取り組んでいる事から、Googleがこの課題を解決することに大きな価値を見出している事が感じ取れます。もしかすると、この2つのアプローチは最終的な解決策の中で合流するのかもしれませんが。IC : talkandroid.comProject Wing(ドローン、デリバリー)
Project Wingは、Titanと同じくドローンのプロジェクトです。こちらは、配達を行うことを目的としています。特徴的なのは、Receptacle(レセプタクル)という荷物を受取るボックスを用いることです。※この動画には登場しません 目的地まで飛来したのちに、ワイヤーを使って配送先として指定したレセプタクルに荷物を降ろすという仕組みなのだと思います。※特許文書が公開されていました。IC : androidauthority.comProject Loon(バルーン、ネットアクセスの提供)
Loonは有名ですね。バルーンを使い、インターネットが利用できない地にネットアクセスを提供します。意外な事にまだインターネットを利用できない人は50億人もいるそうです。Astro Tellerは「これらの人々をインターネットに接続できるようにすること以上に平和的で繁栄をもたらす手段は少ない」と述べています。There are 5 billion people in the world who don’t have Internet connections, and there’s very little that would cause the world to be more at peace, more prosperous than getting the other 5 billion people on the planet connected. by Astro Tellerいくつもの形状のバルーンや、接続方式を試験し、現在はもう15Mbpsぐらいのスピードが出ているとTEDトークの中で語られています。15Mbpsあれば動画も見れますね。IC : wikipedia.comバルーンをいくつも放ち、ソフトウェアでのコントロール下で浮遊させます。ユーザーとのコネクションは最適なバルーンのカバレッジによって行われるそうです。