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仮想通貨・ビットコイン・ICOに関連するブログになりました。トークン大好きです。

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LIFE WITH CRYPTOCURRENCY

Fintech系ユニコーン企業3社から学ぶフィンテックのビジネス。評価額10億ドル超の金融ベンチャーをピックアップ。

やっぱりイノベーティブなベンチャーが好き。今回は久々にフィンテック。

このブログは元々はテクノロジーとかベンチャーの事を書きたくて始めたのですが、しばらくの間、「ドナルド・トランプ」とか「アップルウォッチ」とか「Welq(ウェルク)」などなど、少し本来書きたいテーマから外れてしまった記事が多かったので、久々に原点回帰をしてみました。

 

やっぱり僕は「世界を変えるディスラプティブな発想な事業モデル」が好きで、その世界に触れたい時は「ユニコーン企業」に注目するようにしています。ユニコーン企業とは「未公開企業で企業価値が$1B超の企業」のことですが、僕が注目する理由は以下の通りです。

  • ある業種やビジネスの急速な企業価値の上昇は社会変化の兆しである
  • 有力なVCが投資をしているということは「実現(発生)可能性の高さ」の証明
  • 派生ビジネスを考えるのに役立つ次世代の基礎技術や巨大な市場が潜んでいる

これが僕がユニコーンに注目する理由です。ユニコーンへの投資機会なんて絶対にないので、経済的なインセンティブはありません。でも、やっぱダイナミックなチャレンジって面白いんですよね。UberもAirbnbもインフラレベルまで成長しましたし。

今回はフィンテックです。このブログを書き始めた当初から注目していたのですが、改めて調べてみても面白いなと思います。今回は3社ほど紹介します。

1.Mozido(モジード)評価額:約2,400億円($2.4B

ー事業の概要

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Mozidoはアメリカのテキサス州を拠点とするFintechベンチャーで、スマートフォンのアプリケーションを使ったデジタルウォレットサービスを中心とした決済プラットフォームを提供している。世界には「携帯電話は持っているが銀行口座は持っていない」という人たちが20億人存在しており、Mozidoはこのような主に発展途上国のユーザーをターゲットにしている。メキシコ、中央アメリカ、カリブ、中東、東南アジア、アフリカを中心にサービスを拡大中。ジャマイカが最も勢いがあるそうです。

 

Mozidoで何ができるのか

Mozidoのウォレットを利用するユーザーは2種類存在する。1つは消費者。そして、もう1つはリアルなお店やオンラインのショップ運営事業者、そして既存の金融機関等の事業者だ。

 

消費者側のユーザーはCONECと呼ばれるクラウド上のウォレットを、スマートフォンのアプリケーション経由で操作・管理する。銀行口座を保つ必要は一切ない。ユーザーはこのウォレットから支払いや送金を行う。お店やオンラインショップでの支払いはもちろん、サービスを提供する事業者はMozidoのアカウントID宛に請求書を発行し、ユーザーはこのウォレット上から公共料金等の請求書の支払いをするといったことも可能だ。

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その他の機能として海外送金や、P2Pのユーザー間の送金、現金の引出、銀行口座からの預入、そして途上国では一般的な携帯電話会社のプリペイドクレジット(Airtime Top-up)の購入も提供されている。

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事業者にとっては複数のPOSシステムに対応しているなどの利便性に加えて、Mozido経由で支払いをしたユーザーに対してのポイント付与などのリワード支援機能や、ユーザーの携帯電話の位置情報と連動したキャンペーンの展開などの付加価値がある。また消費者であるユーザーとの決済やコミュニケーションだけでなく、B2B mVaultと呼ばれる事業者同士での決済にも対応している。

 

これだけの機能を銀行口座がなくても、銀行を介さなくても、リアルなお金としての機能を果たすエコシステムが構築されているのだ。

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ービジネスモデルの考察

日本に住んでいると、このようなサービスの必要性を感じる事は少ない。銀行口座を持つハードルは低く、クレジットカードは幅広く利用可能、銀行の支店やATMは至る所にあり、SuicaIDQuickpayなどの電子決済もとても便利だ。日本の金融サービス・決済サービスは改善の余地はあるもののとても整備されていると言える。現金を持っていて強盗に襲われる心配も、このMozidoがターゲットにする地域と比較すると格段に低いだろう。そして、昨今南米で大規模な摘発があったように、偽札の流通もあり現金に対しての信頼も相対的に低い。

 

Mozidoがターゲットとするような国では、そもそも銀行の支店がほとんどなく、ATMも少ない、もしくはATMのサービスの提供(回線とか)が非常に不安定だ。個人的な経験から言っても、東南アジアなどでは、現金をGETするのにも一苦労で、タクシーに乗る時は現金を一定額用意しないといけなかったりと、お金に関する不便やストレスが多い。

 

このような背景を抱えた国が経済的な発展を加速させる為には、このMozidoのようなプラットフォーム的金融サービスはとても重要で、受け入れ普及するスピードも早いことが特徴だ。それを象徴するように、この手のサービスは実は歴史がそれなりにあり、古くは2000年代後半からアフリカで地位を得始めたM-PESAが有名だ。

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画像:http://gaiax-socialmedialab.jp/post-28328/

そして、現在インドでシェアを急速に伸ばしているOne97  Communications社のPaytmも決済サービスとウォレットを提供している。Paytmはインド最大級のオンラインマーケットプレースも展開している。その他にも、日本ではLINEがLINEpayを提供しているし、中国ではアリババのAlipayが急速にシェアを伸ばしている。

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画像:Paytmのサービスラインナップ

 

背景は違うが、ウォレットを電子化して現金を廃止しようとした取り組みとしてはイーロン・マスクやピーター・ティールがチャレンジした「Paypal」も有名だ。Paypalはレガシーな金融サービス事業者の圧力や規制によってその野望を果たすことはできなかったが、インフラや規制が整備されていない途上国ではチャンスが大きい。また、仮想通貨であるビットコインなどのブロックチェーン技術を用いた技術も、今後金融インフラが脆弱な国や、政情が不安定な国では同様の役割を果たす可能性があるだろう。

2.Transfer Wise(トランスファーワイズ)評価額:約1,100億円($11B

ー事業の概要

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TransferWiseはフィンランド出身の2人の創業者が2010年に創業したフィンテックスタートアップだ。高いと言われる国際送金の手数料を下げることをミッションとしている。世界の国際送金の取扱高は年間で510兆ドルあり、レガシーな銀行は国際送金の手数料によって3,000億ドルの収入を得ている。TransferWiseは従来型の送金サービスの十分の一の手数料でサービスをユーザーに提供している。TransferWiseは既に毎月10億ドルの以上の送金を取り扱っているが、まだシェアとしては1%である。

ーTransferWiseで何ができるのか

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TransferWiseのサービスはユーザーの「国際送金」の目的である、「国家を超えた送金」や「異なる通貨での支払い」という機能を果たしながら、実際には「異なる2国間でニーズが合致するユーザー同士をマッチングする」という方法を取っている。

つまり「ユーザーA:日本在住でアメリカでドル建ての支払いがしたい」、「ユーザーB:アメリカ在住で日本で円建ての支払いがしたい」というユーザー同士をマッチングしてお互いに現地での支払いを肩代わりし合うのだ。この仕組みによって銀行を介する必要もなく、通貨の両替に掛かる手数料もない為、手数料が安くなるのだ。

TransferWiseはスマートフォンのアプリケーションも提供している。PayPalの口座との連携も可能だ。筆者もダウンロードしたがシンプルで使いやすい。

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画像:http://fintech-note.blogspot.jp/2015/02/andreessen-horowitztransferwise45b.html

 

ービジネスモデルの考察

TransferWiseには同じくシリコンバレーのボスと言われ、PayPalのファンダーで、現在はドナルド・トランプの政権移行チームにも参加しているピーター・ティールが早期に投資をしている。その後にヴァージン・グループのリチャード・ブランソンやシリコンバレーの最有力ベンチャー・キャピタルであるアンドリーセン・ホロウィッツが相次いで投資をしている。TransferWise「レガシーな金融ビジネスのプレイヤーを脅かすビジネスモデル」の王道だ。個人的にはレガシーで超非効率な銀行とか証券会社が大嫌いなので、この手のプレイヤーはどんどん増えて欲しいと思っている。

 

この国際送金のニーズは既に書いた数字によって、これまでも、そして現在も確かなニーズがある(あった)ことがわかる。これは「お金」の価値が国家によって”のみ”裏付けされる間は続くだろう。ビッドコインやその他の非中央集権的でその価値を広く保証できるようなお金が世界で広く流通するようになれば、TransferWiseのビジネスは不要になるが、その時はいつまで経っても来ないか、まだまだ時間が掛かるだろう。しかし、従来の国際送金手数料が「高い」と感じ、ユーザーがこのサービスを支持する事こそが、「レガシーなお金の仕組み」が時代とマッチしていないことの証拠だろう。

3.Funding Circle(ファンディングサークル)評価額:約1,000億円($1B

ー事業の概要

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Funding Circleはロンドン発のソーシャルレンディングを提供するフィンテックベンチャーである。ソーシャルレンディングとは何か。簡単に説明すると「オンラインで資金の貸し手と借り手をマッチングする仕組み」である。FundingCircle20,000を超える中小ビジネス事業者と50,000人を超える投資家をマッチングするローンのマケットプレースとも言える。投資家は個人投資家を中心に機関投資家や国家(UK)も含まれる。投資家に対しては平均7%/年のリターンを提供し、中小事業者にはデジタルアナリティクスを駆使した低コストでのリスク評価を実現することで適切な借入利率での資金調達機会を提供する。

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画像:Slideshare

ーFundingCircleで何ができるのか

FundingCircleで資金を借りたい事業者はFundingCircleのホームページからオンラインで申し込むことができる。資金需要やビジネスの内容を記入し送信することでFundingCircle側は審査(多くはAIによるビッグデータアナリティクスを活用し自動で)を行い、ローンの申込者に対して格付けを行う。下の図はFundingCircleでの格付けとその利率の概要だ。最高のA+の格付けがされるとその利率は7~8%程度、最低のEであれば利率は20%超となる。

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投資家はFundingCircleによってマーケットプレース上で提供された格付けとその他のビジネスに関する情報から投資判断を行う。マーケットプレース上で投資したいローンが見つかったあとは条件の「ビッド」を行い投資を希望する投資家同士で条件を競い合う。人気のある案件はこのビッドによって調整され融資の条件が良くなることもあるのだ。

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ービジネスモデルの考察

このビジネスモデルは「レガシーな銀行業への挑戦」というよりは、「レガシーな銀行の限界」を意味している感がある。個人的な感だが、フィンテックの勃興によって、日本の地方銀行の役割が間もなく終わりを迎えようとしている気配を感じている。

 

筆者は実は以前に中小企業の資金調達担当として、メガ・地方で複数の銀行を相手に借入交渉を行ったことがあるが、これがとにかく面倒で非効率だったのを覚えている。提出が必須な複数期の財務諸表は何故か印刷でしか受け取らなかったり(1期で数十頁になる)、担当者は高齢で最新のIT関連のビジネスモデルや市場動向を一切理解できないことさえあり(スマホを触った事がない行員も)、挙句の果てには、行内稟議の文章を代わりに考えたことさえもある。(愚痴っぽくなってきたが)やり取りは対面が中心で、次に電話、メールの利用は行内規則で制限されていたりもして、時代遅れが甚だしい(わずか3年前に某栃木の地方銀行ではITが関連する部門でパソコンが複数人で共通利用だった)。とにかく、全くスムーズではなく、審査に日数も掛かる(少なくとも10分の入力で数日の審査というレベルではない)。あのような旧態依然の体制では、中小事業者の細かな資金ニーズに答えることは絶対できないだろう。

 

この図はFundingCircleでの貸し倒れの可能性を格付けごとに表示している。

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人がほとんど介入しない与信審査で、貸し倒れのリスクがトータルで1.7%しかないのだ。日本の銀行での不良債権化率はリーマンショックがあった2008年に1.5%程度まで上がり、現在は1%以下に更に減少している。(これは融資条件を更に厳しくしていることもある)原因はなんにせよ、審査能力に大きな差はもうないしリスクを取って中小事業者に資金を回している新しいプレイヤーの方が健全だろう。

 

日本のフィンテック業界でもクラウド会計ソフトを提供するfreee社が北國銀行と組んで、オンライン上の会計データとAPIを活用した分析技術により、審査の手間や時間を短縮する取り組みを行っている。この流れをどんどん加速させて不優秀な銀行の営業マンや仕事が遅い融資審査担当者が失業するレベルまで追い込んで欲しいと心から願ってしまった自分がいる。少なくとも銀行の営業マンの役割が変わることは間違いないだろう。

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画像:ITPro

さて、このFundingCircleのようなオンラインでの債権のマーケットプレースが成熟し、会計処理や請求書発行や、その決済のほとんどがオンラインで行われるようになれば、更なるビジネスの機会も生まれるだろう。例えば、A社からB社に請求書が発行されていて、B社がオンライン上で期日通りに支払う意志を表明(保証)しているValidな請求書を個人投資家Cさんが割り引いて購入する」というような事もできるようになるだろう。その他にも、IoT技術の普及で在庫管理がリアルタイムに高度にデジタル化されれば担保にできる資産の可視化も進み、借入のチャンスが増えることだろう。全ての会計情報がデジタルになれば、審査自体を「常時自動化」することもできる。借り手と貸し手は緊張感をより持つし、「金利は常時変動する」ような契約を結ぶ可能性も出てくるだろう。この状態が実現できれば、借り手は常に「より良い条件での借り換え」を求めることができるし、貸し手も監視コストが下がれば借り手に対してアドバイス(要求)をしやすくなる。

 

このFundingCircleと同様のビジネスモデルを展開するフィンテックプレイヤーは少なくない。「Prosper Marketplace」や「Lending Club」、「Kabbage」、「OnDeck」などは多少のビジネスモデルの差異はありながらも競合している。

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画像:SlideShare

 

※フォーブスで世界の有力Fintech50社が取り上げられた号です。

ForbesJapan (フォーブスジャパン) 2016年 04月号 [雑誌]

ForbesJapan (フォーブスジャパン) 2016年 04月号 [雑誌]

 

 

 

以上。フィンテックについては過去にも記事を書いているので是非御覧ください。

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